Oracle EBS 取引コミュニティアーキテクチャ


ページ内目次

 TCA
 レコード作成
 ジオグラフィ階層
 住所スタイル
 バリデーション設定
 顧客統合

🚀 新機能:Trading Community Architecture(取引コミュニティアーキテクチャ)

1. この新機能の目的

Oracle R12 で新たに導入された Trading Community Architecture(TCA) は、取引先(サプライヤーや顧客)や地理的情報をより効率的に管理するための機能です。これにより、サプライヤー、顧客、住所などのデータを一元管理できるようになります。

この機能は、特に以下のような点で便利です:

  • 顧客とサプライヤーのデータを一度作成したら、重複してデータを入力する必要がなくなります。

  • 顧客やサプライヤー間の情報のリンクができるため、データの整合性が向上します。

2. なぜ必要だったのか?

Oracle R11i では、顧客とサプライヤーは別々に管理されていました。例えば、もし同じ企業が顧客でもあり、サプライヤーでもある場合、それぞれで別々に情報を入力する必要がありました。以下のような手順です:

  • 顧客としての情報入力(住所、名前、電話番号など)

  • サプライヤーとしての情報入力(同じ住所、同じ名前など)

この方法では、同じ情報を何度も入力する必要があり、効率が悪かったです。


3. TCA(取引コミュニティアーキテクチャ)の改善点

R12では、これを解決するために**「パーティ」**という新しい概念が導入されました。

  • パーティ(Party) は、顧客やサプライヤーを指すわけではありません。あくまで「組織の名前」や「取引先情報」のようなものです。

  • パーティを作成した後に、サプライヤーや顧客として変換(リンク)できます。

4. サプライヤーから顧客を作成する方法

もし顧客がサプライヤーである場合、まずはサプライヤーを作成してから、そのサプライヤーを顧客に変換する必要があります。重要なのは、サプライヤーのデータを先に作成しないと、顧客データとして情報が流れません。

  • サプライヤー → 顧客の順番で作成しないと、データの流れが正しくなりません。

5. TCAのメリット

  • データの重複入力なし:一度入力したデータをサプライヤーや顧客で共有できます。

  • 管理が簡単:顧客やサプライヤーとして使用する情報は同じパーティからリンクできます。

  • 地理的な階層管理:税務目的や顧客作成時の住所スタイルなどを管理できます。


6. 補足

  • TCAは主にマスターデータ管理(MDM)に基づいたアプローチです。これにより、サプライヤーや顧客、住所などの情報を一元的に管理することが可能になり、企業の運用が効率化されます。

  • 今後の設定で 地理的な階層(住所など)を税務管理や顧客管理に活用する方法も説明しますが、今回は主に顧客とサプライヤーのデータ統合に関する基本的な話をしています。


🏁 まとめ

Trading Community Architecture(TCA)の導入により、Oracle R12では顧客やサプライヤーのデータが一元管理できるようになり、同じ情報を何度も入力する手間が省けるようになりました。

  • サプライヤー→顧客 の順番でデータを作成する

  • パーティとしてデータを管理し、後からサプライヤーや顧客として変換する

これにより、データの管理がスムーズになり、エラーも減少し、効率的に運用できるようになります。


🚀 顧客レコードをサプライヤーから作成する方法

1. サプライヤーから顧客レコードを作成

  • 顧客レコードをサプライヤーから作成するのは、Oracle R12の新しい便利な機能です。

  • ただし、逆に「顧客からサプライヤーを作成する」ことはできません。これは、アカウントペイアブル(AP)モジュールがまだ旧バージョン(11i)のデータ構造を使用しているためです。

    • サプライヤーは 「サプライヤー用テーブル」 にデータを保持しており、そのデータはパーティ(取引先)情報にリンクされるものの、顧客のデータはサプライヤー画面には反映されません。

このため、もし新しい顧客が将来的にサプライヤーにもなることが分かっている場合は、まずサプライヤーとして作成し、その後顧客に変換する必要があります。

2. サプライヤーのデータを顧客にコピー

  • まず、サプライヤーの情報(例:住所、取引先名など)をコピーして顧客として作成します。

  • これにより、再入力の手間を省くことができ、すでにサプライヤーとして存在する情報を顧客に反映させることができます。

手順:

  1. Payables責任者でサプライヤー情報を表示

    • サプライヤー名:Consolidated Supplies

    • 対象サイト:Springfield, Texas

  2. Receivables責任者で顧客を作成

    • 顧客の作成画面に行き、サプライヤー名を検索するが、最初は表示されない

    • その理由は、顧客画面でサプライヤー情報を表示するためのプロファイル設定が必要だからです。

3. 必要なプロファイル設定

顧客画面でサプライヤー情報を表示するためには、以下のプロファイル設定を行う必要があります。

  • プロファイル設定:「R Show Parties Without Accounts

    • 設定:Yesにすることで、顧客画面でもサプライヤー情報を表示できるようになります。

    注意点

    • サイトレベルで設定を行うと、他のユーザーにも影響を与える可能性があるため、責任者レベルユーザー個別で設定する方が安全です。

4. 顧客作成後

  • 設定後、再度顧客作成画面でサプライヤー情報が表示されるようになります。

  • サプライヤー情報から顧客アカウントを作成する際、既存のサプライヤー住所をそのままコピーできます。

サンプル:

  • サプライヤー住所:Springfield, Texas

  • 顧客レコードが作成され、そのアドレスもコピーされます。

5. 顧客レコードが作成される

  • 顧客レコードが作成されたことが確認できます。これで、サプライヤーとしての情報が顧客アカウントにリンクされました。

6. まとめ

この機能のポイントは以下の通りです:

  • 顧客レコードをサプライヤーから作成できる。

  • 顧客からサプライヤーを作成することはできない(APモジュールの制約)。

  • 顧客画面でサプライヤー情報を表示するためには、プロファイル設定を行う必要がある。

  • サプライヤー情報をそのままコピーして顧客アカウントを作成できる。

これにより、顧客とサプライヤーのデータ管理が簡単になり、データの重複を避けることができます。


🚀 ジオグラフィー階層とは

ジオグラフィー階層は、顧客、サプライヤー、そして在庫の場所などに対して、地理的な情報を階層的に整理し、誤ったデータ入力を防ぐための新しい機能です。これにより、入力ミスを減らし、正確な情報を維持することができます。


1. ジオグラフィー階層の確認方法

ジオグラフィー階層を確認するためには、Trading Community Manager の責任者メニューにアクセスします。

  • 手順:

    1. メニューから 「Trading Community」 を選択。

    2. サブメニューから 「Administrate」 を選択。

    3. 「Geography Hierarchy」 をクリック。

すると、Oracleで利用可能な国のリストが表示されます。各国に対して、ジオグラフィー階層が設定されているかどうかを確認できます。設定がされている場合は、チェックマークが表示されます。


2. アメリカ(US)のジオグラフィー階層

今回はアメリカ(US)のジオグラフィー階層を例に説明します。USのジオグラフィー階層は次のようになっています。

  • 最初のレベル: 州(State)

  • 2番目のレベル: 郡(County)

  • 3番目のレベル: 市(City)

  • 4番目のレベル: 郵便番号(Postal Code)

これらの階層を使って、データがどのレベルに属するのかを整理できます。


3. ジオグラフィー階層の管理とバリデーション

  • ジオグラフィー階層には 「バリデーション」 を管理する機能もあります。これにより、ユーザーが誤った住所を入力するのを防ぐことができます。

    • : 州、郡、市、郵便番号などの属性を、それぞれ対応するバリデーションと関連付けます。

  • バリデーションの設定:

    • Text Validation をオンにすると、その属性(州、郡、市など)が税務情報と関連付けられ、税金計算や編集ルールを適用できます。

    • Geography Validation をオンにすると、住所の作成時に、あらかじめ設定されたリストからの選択を求められます。

  • バリデーション設定の詳細:

    • 警告、エラーメッセージを設定することができ、ユーザーが誤ったデータを入力した場合に通知を表示できます。


4. エアロケーションとロケーションの違い

ジオグラフィー階層は、ロケーション(住所)エアロケーション(空港などの特定の施設) の2種類があります。両者は少し異なり、異なる属性を持っています。

  • ロケーション(住所): 住所情報(州、郡、市、郵便番号)にマッピングされます。

  • エアロケーション: 例えば空港など特定の施設に対応する属性が異なります。


5. 詳細情報の表示

  • 「View Details」 をクリックすると、各階層(州、郡、市、郵便番号)の詳細情報が表示されます。

    • : 「テキサス州」を選択すると、その州に属するがリストに表示されます。

    • さらにその郡の中にある、そしてその市に属する郵便番号が表示されます。


6. 新しいデータの追加

  • 新しいレコードを追加するには、階層の任意のレベルで**「+」ボタン**をクリックし、新しいデータを入力します。

    • 例えば、新しい郵便番号を追加する場合、郵便番号の階層で「+」ボタンをクリックし、データを追加します。

  • 削除や更新も可能で、誤ったデータを修正することができます。


7. まとめ

  • ジオグラフィー階層は、住所や施設のデータを整理し、誤入力を防ぐための強力なツールです。

  • 各国ごとの階層(州、郡、市、郵便番号など)を適切に設定し、バリデーションを行うことで、正確なデータを維持できます。

  • ロケーションエアロケーションの違いを理解し、目的に応じた階層設定を行いましょう。


🚀 住所スタイルとジオグラフィー階層の関連

1. 住所スタイルとは

住所スタイルは、顧客、サプライヤー、または在庫の場所(ロケーション)を設定する際に使用されるものです。住所スタイルは国ごとに設定され、Receivables(売掛金管理) モジュールで管理されますが、実際には Payables(買掛金管理)Inventory(在庫管理) でも使用されます。

2. 住所スタイルの設定方法

住所スタイルを国ごとに関連付けるには、以下の手順を実行します。

  • 手順:

    1. メニューから「Setup」を選択。

    2. System」をクリックし、「Countries」の機能を選択。

    3. 住所スタイルを設定したい国を検索(例: United States)。

    4. 米国(United States)には「Postal address US」という住所スタイルが関連付けられています。この住所スタイルは、米国に関連するすべての顧客に使用されます。


3. 住所スタイルの詳細設定

住所スタイルの構造を確認するためには、次の手順を実行します。

  • 手順:

    1. メニューから「Setup」→「Financials」→「Flexfields」→「Descriptive Segments」を選択。

    2. Receivables」を選んで、「Address」を選択します。

    3. 住所スタイルが「Postal address US」の場合、その住所構造が表示されます。

具体的には、米国の住所スタイルには以下のようにマッピングされます:

  • 住所1、住所2、住所3、住所4

  • (City)は「City」に

  • (County)は「County」に

  • (State)は「State」に

  • 郵便番号(Postal Code)は「Postal Code」に

このように、住所スタイルとジオグラフィー階層でのフィールドのマッピングが重要です。例えば、は「State」に、は「County」に、は「City」に対応するように設定します。


4. エアロケーションの住所スタイル

エアロケーション(空港などの施設)の住所スタイルは、通常の住所スタイルと少し異なります。例えば、米国のエアロケーションには次のようなマッピングがあります:

  • **市(City)**は「Town or City

  • **州(State)**は「Region 2

  • **郵便番号(Zip Code)**は「Postal Code

  • **郡(County)**は「Region 1

  • **国(Country)**は「Country

これらのマッピングは、ジオグラフィー階層で設定された内容に一致する必要があります。つまり、エアロケーションの住所フィールドも正しくマッピングされていることが重要です。


5. ジオグラフィー階層とのマッピング

ジオグラフィー階層と住所スタイルの間でフィールドが適切にマッピングされていないと、バリデーションエラーが発生する可能性があります。そのため、顧客サプライヤーの住所情報を正しく入力するためには、ジオグラフィー階層住所スタイルのフィールドが一致していることを確認する必要があります。


まとめ

  • 住所スタイルは、顧客サプライヤー在庫ロケーションなどに関連する住所情報を管理するための設定です。

  • 住所スタイルのフィールド(例: 州、郡、市など)は、ジオグラフィー階層のフィールドとマッピングされます。

  • 住所スタイルを正しく設定し、ジオグラフィー階層と一致させることが、データ入力やバリデーションを正確に行うために非常に重要です。


🚀 ジオグラフィー階層の適用例 - 顧客住所の作成

1. 顧客住所作成画面

まず、私は顧客作成画面にいます。ここでは、以前「サプライヤー」として作成した顧客を顧客としてコピーした状態です。ジオグラフィー階層の改善により、サプライヤーをそのまま顧客に変換できるようになっています。

2. 新しい「配送先住所」の作成

次に、この顧客に「配送先住所(Ship To Site)」を作成する方法を見てみましょう。

  • 手順:

    1. 顧客画面で「Create Site(サイト作成)」ボタンをクリック。

    2. サプライヤーからコピーした既存の住所が表示されますが、新しい住所を作成したい場合は、住所を手入力します。

    3. 新しい住所として「Second Street」、「Houston」、「County」と「郵便番号」を入力。

    4. 住所が正しく入力されている場合、「Finish」をクリックし、「Save」および「Apply」を押して住所を保存します。

3. バリデーションエラーと警告

住所を保存しようとすると、いくつかのフィールドでバリデーションエラーが発生する場合があります。

  • 例えば、**郡(County)市(City)**の入力に誤りがある場合、以下の警告が表示されます:

    • Address elements are not validated(住所の要素が検証されていません)」というメッセージが表示され、誤った住所を保存しようとすると警告が出ます。

この警告は無視して適用することもできますが、必ずしも必須ではないため、エラーの詳細に注意することが重要です。

4. 正しい住所情報で保存

誤った情報を修正して、正しい**郡(County)市(City)**を入力した後、再度保存を試みます。

  • 郡と市が正しい場合、エラーは解消され、住所が正常に保存されます。

5. ジオグラフィー階層のバリデーション設定

もし、ジオグラフィー階層でバリデーションをエラーとして設定すると、誤った住所は保存できません。バリデーションエラーが発生した場合、システムは保存を許可しません

  • 設定変更方法:

    • ジオグラフィー階層の設定を変更して、警告ではなくエラーとして設定することで、誤ったデータが保存されることを防ぐことができます。

6. 住所データ入力ミスの防止

ジオグラフィー階層を適切に設定することで、誤った住所の入力を防げます。特にERPシステムが大きくなると、データ入力ミスが増えがちです。この機能を活用することで、ユーザーが誤った住所データを入力することを防ぎ、データの整合性を保つことができます。


まとめ

  • ジオグラフィー階層の活用: 顧客住所の作成時に、ジオグラフィー階層による住所バリデーションが機能します。これにより、誤った住所情報が入力されることを防げます。

  • バリデーション設定: ジオグラフィー階層で警告またはエラーの設定を行い、誤ったデータを事前に防ぐことができます。

  • 柔軟性: 郵便番号やその他の項目に対するバリデーションを不要にすることもでき、ニーズに合わせて柔軟に設定が可能です。


顧客統合(Customer Merge)の流れ

1. 顧客統合画面へアクセス

🖱️ 操作手順:

  • 取引先管理メニュー顧客 → **アカウント統合(Account Merge)**を選択


2. 統合の設定

📝 設定項目:

  • 統合元アカウントと統合先アカウントを選択

  • 統合理由として「重複顧客」や「合併」を選択

  • 統合後、元のアカウントを削除するかどうかを設定


3. 統合の実行

⚙️ 操作:

  • サイト選択後、「Save」 → **「Merge」**をクリック

  • バッチ処理も可能(複数の顧客を一度に統合)

  • 単一の統合の場合は、「Continue」を選んで即座に実行


4. 進行状況の確認

🔄 進行状況確認:

  • リクエストビューで実行中の顧客統合プログラムを確認

  • 顧客サイトが多数の場合、処理に時間がかかることがあります


5. 統合完了後

✔️ 完了確認:

  • 統合元の住所が統合先に移行

  • 例えば、Texasの住所がNew York Cityの住所に統合

  • 統合後、情報が正しく反映される


顧客統合の注意点

⚠️ 注意:

  • 統合により関連する住所や取引情報が全て統合される

  • **顧客の分割(Customer Split)**も可能、新しい顧客アカウントを作成して一部の情報を分割


まとめ

📚 学んだこと:

  • 顧客統合のプロセス(アカウント統合の方法)

  • ジオグラフィー階層による住所管理・バリデーション

  • サプライヤーを顧客に変換する方法

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