Oracle EBS 組織構造

 


ページ内目次

 MOAC
 設定・確認
 セキュリティプロファイル
 責任設定
 レポート

🏛️ Oracleの組織構造(Org Structure)を理解しよう

Oracle EBSでは、企業の組織を以下のような階層構造で管理します:


① 👨‍⚖️ Legal Entity(法的組織)

  • 法人として登録された単位。税務や会計の観点で区切られる単位。

  • 例:Amazon Inc(本体)、Amazon Japan(子会社)など。


② 📘 Ledger(元帳)

  • 各リーガルエンティティに紐づく、財務データの保管場所。

  • R12では「Set of Books(11i時代)→ Ledger(R12からの呼び名)」に変更。

  • 会計エントリ(仕訳)や通貨、会計カレンダーなどを管理。


③ 🏢 Operating Unit(業務単位)

  • サブモジュール(例:AR/AP/INV)が所属する単位。日々の業務が行われる現場レベルの単位。


④ 📦 Inventory Organization(在庫組織)

  • 実際の在庫や商品を管理する単位。

  • 品目、在庫、取引、原価などの情報を保持。

  • 詳細はこの章では深入りしない。


🔁 R12以前の組織アクセス制御(11iの仕組み)

  • 各「責任(Responsibility)」に Mo: Operating Unit(MOプロファイル)を設定。

  • その責任を使ってアクセスできるのは 1つのOperating Unitだけ!

  • つまり、複数の拠点(サンパウロとリオ)を操作するには「責任を切り替える」必要がありました。


💡 Shared Service(共有サービス)のニーズ

  • 顧客からの要望:「ラテンアメリカ全体のAPを1つの拠点で処理したい」

  • 旧方式では「責任切替」が必要で非効率…

  • → そこで登場したのが Multi-Org Access Control(MOAC)!


🧩 MOAC(Multi-Org Access Control)とは?

概要Oracle R12から導入された新しいアクセス制御機能
目的複数のOperating Unitを**1つの責任(Responsibility)**で操作するため
仕組み複数のOperating Unitを「Security Profile(セキュリティプロファイル)」としてまとめる

🛠️ どう使うの?

  • 「Security Profile」を作成して、2つ以上のOperating Unitをまとめる。

  • このSecurity Profileを、責任のプロファイルオプションに設定することで、
    1つの責任から複数拠点のデータにアクセスできるようになる。

例:

拠点使用者
R12 Training SP(サンパウロ)元々のAR部門
R12 Training RJ(リオ)別のAR部門
→ この2つを1つのAR責任で管理可能に!


❗注意:なぜ全拠点はまとめられない?

  • 実際の例では、USとブラジルのOperating Unitはまとめられないようにあえて設定

  • 理由:LedgerやLegal Entityが異なるため、MOACの制限によりまとめることができない。

  • これは、「最初の組織設計が重要」であることを示すためのデモ。


📘 まとめ:Oracleの組織構造とMOACのキーポイント

要素内容
Legal Entity税務や法的に区切られる法人単位
Ledger会計取引を記録する単位(旧:Set of Books)
Operating Unit業務ごとの実行単位(モジュール単位の業務管理)
Inventory Org在庫や品目の管理単位
Mo: Operating Unit旧来の責任に紐づける制御方法(1責任 = 1拠点)
MOAC複数拠点をまとめて1責任で扱う機能
Security ProfileMOACで使用する、Operating Unitを束ねる設定項目


📘 組織構造の確認・設定

前回学んだ「Oracleの組織構造(Org Structure)」について、実際に Oracleの画面でどこにあるのか?どこで確認・設定するのか? を紹介します。


💡 ポイント:組織構造の確認・設定は「General Ledger」から行う

Oracle R12では、以下のような情報はすべて General Ledger(GL)責任から確認・設定できます。

確認・設定できる項目内容
Legal Entity(法的組織)会社単位(税務上の組織)
Ledger(元帳)会計取引の単位(11iではSet of Books)
Operating Unit(業務単位)実際に日々業務を行う単位(各部門、拠点など)

👉 Oracle 11iまでは、それぞれ別の場所で管理されていてわかりづらかったですが、R12では Accounting Setup Manager にまとめられました。


🧭 実際の操作手順(ナビゲーション)

  1. General Ledger責任にログイン

  2. メニューから順にクリック

    • Setup

    • Financials

    • Accounting Setup Manager

    • Accounting Setups

  3. HTMLページが開きます(ブラウザベースの画面)

  4. 検索欄から次のように探せます:

    • Legal Entity:会社単位

    • Ledger:会計元帳

    • Operating Unit:業務拠点


🏛️ 表示される内容の例(Legal Entity)

  • R12 Training Legal Entity US

  • R12 Training Legal Entity Brazil

それぞれが Ledger(会計元帳) とリンクされていることも確認できます。


📘 Accounting Setupの中身を見てみる

  • 各Ledgerには次のような設定項目があります:

項目内容
通貨(Currency)使用する通貨(例:USD、BRL)
会計カレンダー(Calendar)会計期間の設定
勘定科目体系(Chart of Accounts)使用する勘定科目
会計方法(Accounting Method)会計基準(例:US GAAP、IFRS)
Operating Unitsの割当どの拠点がこのLedgerに属するか
Legal Entityの割当どの法人がこのLedgerに属するか

🔁 Operating UnitとLegal Entityの関係

  • 1つのOperating Unitは、複数のLegal Entityにまたがることが可能です。

  • デフォルト(初期値)のLegal Entityはありますが、実際の取引時に切り替えることができます。

つまり:

「1つの業務拠点が、複数の会社の処理を担当できる」という柔軟な仕組みです。


👥 Business Group(ビジネスグループ)とは?

用語説明
Business Group従業員データやユーザーアクセスを管理する、最上位の組織単位
  • Business Groupごとに人事データ(従業員情報)を完全に分けることができます。

  • つまり、異なるビジネスグループ間での情報共有はできません(制限がある)。


❗設定ミスの注意点(実話)

  • クライアントが「Operating UnitごとにBusiness Groupを作成」したことで、

    • 承認処理のたびに15個の責任を切り替える必要があり、

    • 結果、Oracleを**再導入(Re-implementation)**するハメに。

👉 これは Multi-Org Access Control(MOAC) での制限(セキュリティプロファイルは1つのBusiness Group内でしか使えない)に関係します。


🛠️ まとめ:組織構造確認の重要ポイント

項目ポイント
General Ledger責任組織構造の設定や確認の中心
Accounting Setup Manager法人、元帳、業務単位などの一元管理画面
Operating Unitの設定1つの拠点で複数の法人の処理も可能
Business Groupの設計不用意に分けすぎると、MOACの制限に引っかかる
設計時の注意最初の構成を間違えると、全体に大きな影響が出る(最悪再構築も…)

✅ セキュリティプロファイル

Multi-Org Access Control(MOAC) を実現するために、
1つの責任(Responsibility)で**複数のOperating Unit(業務単位)**を扱えるようにする仕組み=**セキュリティプロファイル(Security Profile)**を作成します。


🔐 セキュリティプロファイルとは?

複数の業務拠点(Operating Unit)のデータにひとつの責任でアクセスできるようにする設定

通常、責任には1つの業務拠点しか紐づけられませんが、
この「セキュリティプロファイル」を使えば、複数の拠点を1つにまとめてアクセスできるようになります。


🔧 セキュリティプロファイルの作成手順(まとめ)

手順内容
HR責任(例:Super HRMS Manager) に移動する
メニュー:SecurityDefine Security Profile
セキュリティプロファイル名を入力(例:R12 Training Brazil)
Business Group(必須) を選択(例:R12 Training Brazil Business Group)
対象とする Operating Unit(業務拠点) を選ぶ(例:São Paulo, Rio de Janeiro)
Save(保存)
Security List Maintenance プログラムを実行する(後述)

💡 Business Groupが超重要!

  • セキュリティプロファイルには、同じBusiness GroupのOperating Unitしか含められません。

  • つまり、異なるBusiness Groupをまたがって設定はできません!

❗注意点(重要)

今回の例では、次のような構成になっていて…

拠点Business Group
US(アメリカ)R12 Training Corporation
São Paulo(サンパウロ)R12 Training Brazil
Rio de Janeiro(リオ)R12 Training Brazil

👉 したがって、US拠点はブラジル拠点と一緒にはできません


🖥️ 実際の操作画面での注意ポイント

  • 黄色の必須入力欄では、Business Groupの指定が必須

  • Secure organizations by organization, hierarchy and/or organization list を選択すると、自由に拠点を選べる方法を使えます(簡単)。

  • 表示されるOperating Unit一覧も、選んだBusiness Groupの範囲内だけになります。


📥 セキュリティプロファイル作成後にやること

▶️ 「Security List Maintenance」プログラムを実行

セキュリティプロファイルを作成したら、それをOracle全体に反映させるために次の作業が必要です。

手順内容
メニュー ViewRequests
Submit New Request を選択
プログラム名:Security List Maintenance を選択
パラメータ設定:
 - Generate list for:"One Named Security Profile"
 - Security Profile:先ほど作成したものを選択
 - Include People:Current and Terminated
実行(Submit)して、完了を待つ


✅ まとめ

学んだこと内容
何を作る?複数の業務拠点を1つにまとめる「セキュリティプロファイル」
どこで作る?HR責任(Super HRMS Manager)内で設定
何に注意?同じBusiness Groupの拠点しかまとめられない
最後に必要?Security List Maintenance の実行で反映完了


✅ セキュリティプロファイルへの責任設定

前のレッスンで作成した セキュリティプロファイル(例:R12 Training Brazil) を、実際に「責任(Responsibility)」に設定するとどうなるかを確認します。


💡背景のおさらい

  • 以前(11i) は、1つの責任に 1つの Operating Unit(OU) しか紐づけられなかった。

  • 現在(R12) は、セキュリティプロファイルを使えば複数のOUを1つの責任に紐づけ可能!


🧪 まずはセキュリティプロファイルを使わない場合

  1. 管理画面(Sysadmin)で、Receivables R12 Students Brazil という責任のプロファイル設定を確認。

  2. プロファイル「MO: Operating Unit」に R12 Training ESP(サンパウロ) だけが設定されている。

  3. 実際にこの責任で取引(Transactions)画面を見ると…

    • 表示されるデータは サンパウロOUの取引だけ


🔧 セキュリティプロファイルを設定してみる

  1. 同じ責任に、新しく作ったセキュリティプロファイル(R12 Training Brazil) を設定する。

    • このプロファイルには、サンパウロ(ESP)とリオデジャネイロ(RIO) の2つのOUが含まれている。

    • ※ 「MO: Operating Unit」 はそのまま ESP のままにしておく(比較用)。

  2. 再び責任に戻って取引画面を開くと…

    • サンパウロとリオ、両方の取引が表示される!


🎯 Oracleの優先順位(重要)

  • Oracleでは、MO: Security ProfileMO: Operating Unit より優先されます

  • つまり:

    • MO: Operating Unit が1つしか設定されていなくても…

    • MO: Security Profile に複数OUが含まれていれば、それら全てにアクセス可能!


🧪 セキュリティプロファイルを外すとどうなる?

  • 設定した MO: Security Profile を削除してみる。

  • 再度、責任で取引画面を開くと…

    • 今度はサンパウロ(ESP)だけのデータに戻る

→ つまり、セキュリティプロファイルをつけ外しするだけで、表示されるOUデータが即座に変わる!


✨ この機能のすごい点

  • わずか1つの設定(セキュリティプロファイル)で、

    • 複数の業務拠点に一括アクセス可能!

    • 責任の切り替え不要!

  • これは 業務効率化・データ管理の一元化 に大きく役立ちます。

  • 特に、承認や分析を担当する部門 にとってはとても重要。


💬 よくあるミス・注意点

  • セキュリティプロファイルを知らないコンサルタントが、

    • 「表示されるデータが変だ」

    • 「アクセスできない」と困っている場合、設定ミスの可能性大!

  • Operating Unitの設定だけでは不十分で、Security Profileも確認が必要!


✅ このレッスンのまとめ

項目内容
検証対象セキュリティプロファイルを責任に設定したときの効果
使ったプロファイルR12 Training Brazil(サンパウロ + リオ)
結果両方のOUのデータが1つの責任で参照可能に!
優先順位MO: Security ProfileMO: Operating Unit
利点業務の一元管理・承認処理の簡素化
注意点セキュリティプロファイルを正しく設定しないと、誤ったデータ表示やアクセス制限が発生する

✅ レポート

これまでに学んできた「セキュリティプロファイル」や「マルチ組織構造(OU, Ledgerなど)」を使って、レポートを1つのOperating Unitごとではなく、Ledger(会計単位)全体で実行する方法を紹介します。


🧠 まずはおさらい

用語意味
Operating Unit(OU)業務拠点(例:サンパウロ支社、リオ支社など)
Ledger会計単位(複数のOUを含むことができる)
セキュリティプロファイル1つの責任で複数OUのデータにアクセス可能にする設定
Responsibility(責任)Oracle内でユーザーの業務領域を定義する単位

💡 R12 でできるようになったこと

以前のバージョン(11i)では、1つの責任で 1つのOUしかレポート出力できませんでした。

しかし R12 では:

セキュリティプロファイルを使うことで、Ledger単位でまとめてレポートを出力可能
→ 複数OUのデータを一度に集計・確認できる!


📊 レポートの実行例(Aging Report)

🔍 Aging Report とは?

  • 売掛金の未回収状況を日数ごとに分類して表示するレポート

  • 例:「30日以内」「30~60日」「90日超」など

💡 実行時のポイント

  1. Reporting Level(レポートのレベル)を「Ledger」に設定
     → これで、複数のOUのデータが対象になる!

  2. Ledgerを選択
     → この例では「R12 Training Ledger Brazil」を選択

  3. その他の設定は以下の通り:

    • 顧客単位で集計(Order by Customer)

    • 表示対象日付(As of Date)を「今日」または「月末」に指定

    • Aging Bucket(例:30日、60日など)は標準のままでOK

  4. 実行(Submit)


📈 実行結果の確認

  • レポート出力を開くと、サンパウロOUとリオOUの両方の取引が表示される

  • 例:

    • 顧客 Atlas(サンパウロ):100,000

    • 顧客 Nova Castuera(リオ):50,000

つまり、Ledger全体としての債権情報が見られる!


🧪 応用:Operating Unit単位で再実行

  • 同じレポートを「Operating Unit」レベルで再実行

  • サンパウロOUを指定すると → Atlas社の100,000だけが表示される

  • この違いで「Ledgerレベル vs OUレベル」の違いが明確に!


📋 その他のLedger対応レポート

  • Transaction Register(取引レジスタ)

  • Create Accounting(仕訳作成)

    • 仕訳も Ledger 単位で一括処理可能!


🎯 まとめ

内容説明
R12での進化セキュリティプロファイルのおかげで Ledger 単位のレポート実行が可能になった
メリット業務効率が大幅に向上。複数OUを一度に確認・処理できる
注意点セキュリティプロファイルを設定していないと OU単位のデータしか見られない
実例Aging ReportやTransaction Registerなどで実行可

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